2015年7月24日金曜日

『望遠ニッポン見聞録』 感想

海外と日本の比較というより、海外から見た日本についてのエッセイ。

ちょっと中を見て面白いから読み始めたのですが、楽しい挿絵を見て「あれこの絵ってテルマエロマエの絵に似てる…。」と思い表紙を見るとヤマザキマリさんの名前が。

絵も描けて文才もありってすごい。
しかしそれも海外での経験から来るものなのでしょう。

エッセイにちょこちょこ挟まれる海外での苦労話、サラッと書いておられますが相当大変だったのでは…。今度はそちらに焦点を当てた本を書いてくれないものでしょうか。

面白そうで気になります。

この本は短編と挿絵がテンポよく収まっていてとても読みやすいです。

海外にいるとどうしても「日本は良かった…。日本は…云々。」と考える瞬間があり、たまにある日本と海外の文化を比べている本でも「日本の素晴らしさ、海外のダメなところ。」が本の趣旨だったりしますが、この本はそれらの本とは一風違います。

作者が「日本人でありながらもこの国の客観的な傍観者である」と自身について述べているように、かなり冷静な日本への考察が書かれています。

また、「この国はこんなに優れているのに、日本ときたら…ブツブツ。」というような内容の本でもありません。日本に対しての作者の愛着のようなものも感じられる本でもあります。


普通だと思っていたけれど言われてみれば変わってるのかも、と日本に対する新たな見方を知れて、そして何よりも面白のでおすすめです。

2015年7月19日日曜日

悲しい親子。『赤い指』 (by東野圭吾) 感想

悲しい親子。『赤い指』 (by東野圭吾) 感想
題名だけ見て明らかにホラーだと思って敬遠していたのですが、東野圭吾さんが作者だったのでホラーじゃないのか、と思って読んでみました。
赤い指 (講談社文庫)
ホラーではありませんが暗い話。
加賀恭一郎シリーズのうちの一つのようで加賀さんが登場していました。


ある日主人公が妻からの電話で急かされて家に帰ってみると、庭先には少女の死体が。
一人息子の が家に連れ込んだ挙句に殺した少女だったのです。

警察に電話しようとする主人公ですが、その妻は電話するなら自殺すると言って脅し、2人は息子の罪を隠ぺいすることにします。

それを見ている主人公の母親であるお婆さんは痴呆で起きていることを全く理解していない様子。

そして調査をしに主人公の家にも警察がやってきますが…。


最後のオチに驚きました。完全に騙されていました。びっくり。

子供を思う親の気持ちってもちろん大切な事だとは思いますが、悪いことをした子供を叱らなかったり挙句に犯罪を隠したりするのは、、間違った愛情です。

それを分かりつつ子供を庇おうとする親が痛々しい。
そして可愛そうな老婆…。

どうにも後味が悪いお話で、良かったのは最後のどんでん返しのみ。

息子は最後まで親が悪いと言っていましたし。なんだかあり得そうで恐ろしかった。後味の悪い話が好きな方におすすめ。(いるのか?そんな人。)

2015年7月18日土曜日

神様とクワガタを飼う小説家。『首折り男のための協奏曲』 (by伊坂幸太郎) 感想

神様とクワガタを飼う小説家。『首折り男のための協奏曲』 (by伊坂幸太郎) 感想
何年かに渡り暗躍する首折り男。
彼に殺された人に関係性はないがいつも首を折られて殺されている。
そんな彼にまつわる幾つかの短編集。

一貫して首折り男の話なのかと思ったら関係ない話が挟まったり、かと思ったらやっぱり首折り男が関係していたり。そして時間がばらばらなので前後関係がよく分からなかったり。
それがまた面白いです。

首折り男は今の時間と過去の時間が繋がることがあると信じています。
彼は昔キャッチボールをする約束をとある大人としたのに、その人が約束を守らなかったことをずっと覚えているのですが、ある日その大人にあって…。

一方、一人の小説家が出てきて彼はクワガタを飼育しています。二匹以上一緒に飼育すると戦い始めるクワガタをなんとか二匹以上一緒に飼おうと色々試す小説家。

しかし必ずクワガタは喧嘩を始めます。彼は片方をあまりにいじめているクワガタを箱から取り出してデコピンをし、言います。

「神様もこんな感じなのかもしれない。見ているときは助けてくれて、悪いやつに罰を与えたりする。でも見ていないこともある。」

この世界の神様はいつも世界中を見守っていると私は思っていますが、この本に出てくる神様みたいであってもいつかはきっと悪者がやっつけられます。

なのできっと今日も、神様にデコピンされないように生きていきましょう。


ネタバレ

2015年6月15日月曜日

母から娘に、娘から母に。 湊かなえ著 『母性 』 感想

母から娘に、娘から母に。 湊かなえ著 『母性 』 感想
人の内面はまるでちょっとしたホラーのような。

母性


マザコンの主人公が結婚、出産、子育て、義家族との付き合いなどを通して強くなっていく話です。 こう書くと普通の話に見えますがとにかく主人公のマザコン度が尋常じゃない。


例えばどうでも良さそうなことですら大人の顔色を見ることを娘に強要したり、事故が起こって母親か娘かどちらかを助けなければいけない状況にあっても迷わず母親を助けようとしたり。

主人公の母親が孫を先に助けるよう言っても聞かないほど、とにかく必死で母親を助けようとします。とにかくそれだけ母親大好きな主人公なのです。

そしてきっと母親を喜ばすことが彼女の喜びであり幸せでもあったのでしょう。そしてそれを一人娘にも求めます。そしてそれに応えられない娘。

娘はもっと違うやり方で母親を喜ばせようとするのですが、中々上手く行きません。


主人公のお母さんはすごく優しそうでいい人に見えるのに、どうして主人公はあそこまで盲目に母親のことだけを考え続けているのか。

そして母親にしか興味がない主人公の愛情が欲しい主人公の娘がかわいそうです。
そして主人公の頼りない夫とその家族。

主人公が可哀想で、主人公の娘はもっと可哀想で。

誰かが悪い訳ではないんだけれども、母親になりたくない人や親離れできていない人が母親になると不幸になる可能性があります。

『告白』で描かれる、子供を失った母親の憎しみもどこかリアルなような、それでもファンタジーなような感情ですが、『母性』で描かれる母親と娘の間に存在する絆もどこか似ています。

 リアルなファンタジー。

2015年6月7日日曜日

著:横山秀夫 『64(ロクヨン)』 感想

県警の広報官の話。
64(ロクヨン)
高校生の娘が家出して行方不明になってしまった県警の広報官とかつて婦警だったその妻。
14年前に起きた誘拐事件64(通称ロクヨン)。犯人を見つけられなかった県警。娘を誘拐され妻にも先立たれた男。誘拐事件を解決できなかったことを悔やむ元警察官。何かを隠そうとしている県警の同僚。高圧的な上司。ネタをよこせと騒ぐ記者たち。

大抵警察の話とすると刑事の話が一般的だと思いますが(この本を読むまで考えたこと無かったけれど)、この本の主人公は広報官。つまり捜査の進歩状況などをマスコミに発表する仕事です。


最初は刑事の仕事に戻りたい一心で、広報官の仕事をこなしていた三上ですが、高校生の一人娘が家出してからはあまり仕事に身が入らなくなりました。

その弱みにつけこむ上司に頭を下げ、業務をこなす三上。

そんなある日警視庁長官が県警の視察にやってくることになりました。長官は46事件の被害者の父親の家に行き会見を行うつもりで、そのために被害者の父の了承を得るよう三上は命じられます。

しかし三上は長官の視察を被害者の父には拒否され、さらに警察学校の同級生でキャリア組の二渡が64事件について県警内で調べて回っていることを知ります。

三上は46事件に隠された秘密を追いますが…。

主人公が強面で奥さんがミス県警に選ばれたような美人で、父親似の娘あゆみは醜形恐怖症でっていう設定が面白かったです。ただグレて家出しただけでも成り立ちそうなのに…。

こういう最後に綺麗にまとまる話は読んでいてすっきりするので好きです。
最後の主人公の心境もかっこよかったです。
調べてみると64、ドラマ化されていてさらに映画化もされるそうですね!しかも前後二部で。


主人公が佐藤浩市はピッタリ!と思いましたが原作で「鬼瓦」とも揶揄されるにはちょっとかっこ良すぎるかな。秋山と三雲以外のキャストは結構イメージ通りですごいです。期待できるかも。