2015年6月15日月曜日

母から娘に、娘から母に。 湊かなえ著 『母性 』 感想

人の内面はまるでちょっとしたホラーのような。

母性


マザコンの主人公が結婚、出産、子育て、義家族との付き合いなどを通して強くなっていく話です。 こう書くと普通の話に見えますがとにかく主人公のマザコン度が尋常じゃない。


例えばどうでも良さそうなことですら大人の顔色を見ることを娘に強要したり、事故が起こって母親か娘かどちらかを助けなければいけない状況にあっても迷わず母親を助けようとしたり。

主人公の母親が孫を先に助けるよう言っても聞かないほど、とにかく必死で母親を助けようとします。とにかくそれだけ母親大好きな主人公なのです。

そしてきっと母親を喜ばすことが彼女の喜びであり幸せでもあったのでしょう。そしてそれを一人娘にも求めます。そしてそれに応えられない娘。

娘はもっと違うやり方で母親を喜ばせようとするのですが、中々上手く行きません。


主人公のお母さんはすごく優しそうでいい人に見えるのに、どうして主人公はあそこまで盲目に母親のことだけを考え続けているのか。

そして母親にしか興味がない主人公の愛情が欲しい主人公の娘がかわいそうです。
そして主人公の頼りない夫とその家族。

主人公が可哀想で、主人公の娘はもっと可哀想で。

誰かが悪い訳ではないんだけれども、母親になりたくない人や親離れできていない人が母親になると不幸になる可能性があります。

『告白』で描かれる、子供を失った母親の憎しみもどこかリアルなような、それでもファンタジーなような感情ですが、『母性』で描かれる母親と娘の間に存在する絆もどこか似ています。

 リアルなファンタジー。